「 依存 」を利用した 習慣作り の テクニック【取扱注意】
今回は、「 依存 」のメカニズムを習慣化に応用する方法について解説していきます。
以下の方におすすめです。
- 無理なく自主的に習慣を続けられるようになりたい人
- 効果の高い習慣化のテクニックを知りたい人
■今回のキーポイント!
- ドーパミンが分泌される行動を組み込む
- 「部分強化」と「連続強化」をうまく使う
- 「内発的動機づけ」が原動力である場合は報酬を設定しない
関連記事:習慣 を続けるたった一つのコツ【 続かない最大の原因は○○ 】
「 依存 」は 習慣 の 究極形
習慣が長続きする一番強力な心理状態とはなんでしょうか?
それは、習慣を「依存状態」にさせることです。
「依存」という言葉の定義は「他のものに頼って生活、または存在していること」という意味です。
つまり「依存」とは、「それがなければ生きていけない」という状態になることです。
よくあるのが「アルコール依存」や「薬物依存」、精神的な面で見ると「恋愛依存」などが当てはまります。
「○○依存」とは別の言い方をすれば「○○中毒」という言い方もできます。
たとえば、「続けたい習慣」の言葉の後ろに「中毒」という言葉を付け足してみてください。
「筋トレ中毒」、「勉強中毒」、「早寝早起き中毒」…
こうやって聞くと、なんだか頑張らなくても勝手に長続きそうな気がしませんか?(笑)
もし「中毒」と聞くとなんだか悪いことをしているような気分になり抵抗があるようであれば、それを「~に夢中」という言葉に置き換えてみてください。
「筋トレに夢中」「勉強に夢中」「早寝早起きに夢中」…
あら不思議、一気に素晴らしいことの様に聞こえてきたはずです(*´ω`)怪しい…
ようは使い方、捉え方の問題です。
ツールに対する有名な言葉「包丁は正しく使えばうんぬんかんぬん…」ということと同じことです。
それでは「習慣」を「依存状態」にさせる方法を見ていきましょう。
ドーパミン が 習慣作り に役立つ理由
結論、習慣を「依存(中毒)状態」にさせるには「ドーパミンを増やす」のが一番効果的です。
簡単に言うと、ドーパミンは「快感」を生み出し、その快感が脳を「中毒状態」にさせます。
「ギャンブル依存」や「ゲーム依存」、最近では「ゲーム課金(ガチャ)依存」など、世の中の実に多くの依存症に「ドーパミン」が関わっています。
つまり、「快感が得られるのでやめられない!」という要因を生み出すのがドーパミンです。
ここで、ドーパミンの特徴を見ていきましょう。
過去に詳しく解説している記事もあるので、もしよろしければこちらも合わせてご覧ください。
ドーパミンの機能
- 高揚感が高まり気分が改善される
- 「喜びや快感」を得られ、モチベーションが高まる
- 脳内にある「行動回路」が強化され、強化された行動への欲求が強くなる
依存 の 種類 と 習慣作り への応用
さて、ここで一旦「依存」について詳しく見ていきましょう。
そのあとで、依存のメカニズムから習慣に応用できる方法を考察していきます。
依存 の種類
1.『物質依存』
薬物などの科学的物質や食べ物に含まれる特有の物質に依存すること。
例:薬物依存、アルコール依存、ニコチン依存、カフェイン依存、過食症、など。
2.『行為・過程依存』
ある行為をする過程で得られる快感や刺激を求めてその行為に依存すること。
例:ギャンブル依存、買い物依存、ネット中毒、ワーカーホリック(仕事中毒)、など。
3.『関係依存』
特定の人間関係やコミュニティに依存すること。
例:共依存、性依存、宗教依存、DV、完璧主義(自己評価への依存)、など。
依存症の脳内メカニズム
「ドーパミン」が分泌されることで、中枢神経が興奮状態になり、快感や喜びを生み出します。
そして、一度その快感や喜びが得られると、それを「報酬」として求める回路が「報酬回路」として脳内に形成されます。
「報酬回路」が出来上がると、「快感物質を分泌させたい」という衝動を引き起こしてその報酬を得るための行動を繰り返すようになります。
しかし、快楽物質による中枢神経への刺激は繰り返すほど耐性がつき、やがて快感や喜びは次第に感じにくくなります。
そして、物足りなさや焦りを感じはじめ、さらに強い刺激を求めるようになりそこから抜け出せなくなる「依存状態」になります。
これが「依存症」が起こるメカニズムです。
依存に関わる脳内の部位
『腹側被蓋野(A10神経系)』※VTAとは腹側被蓋野の略称。
簡単に説明すると、「ドーパミン」が放出される神経が集まっている脳の部位のこと。
VTAに含まれるA10神経系から放出されたドーパミンは「側坐核」や「前頭前野」に出力される。
- 「側坐核」にドーパミンが出力されることで高揚感を得られる
- 「前頭前野」にドーパミンが出力されると報酬を求める衝動が強化される
VTAのドーパミン神経は報酬や目標志向型の行動に中心的な役割を担っている。VTAのドーパミン放出神経細胞は様々な入出力パターンを持つものが混在しており、中にはドーパミンに加えてGABAやグルタミン酸を放出するドーパミン神経もいる。(中略) 様々な個々の入力、出力、局所回路は報酬行動や忌避行動を引き起こすのに十分であり、この小さな細胞集団の行動への寄与は非常に重要である。 Wikipedia「腹側被蓋野」より引用
『側坐核』
側坐核(そくざかく、英: Nucleus accumbens, NAcc)は、前脳に存在する神経細胞の集団である。報酬、快感、嗜癖、恐怖などに重要な役割を果たす Wikipedia「側坐核」より引用
『前頭前野』
ドーパミンは大脳皮質の中では前頭葉に最も多く分布しており、前頭前野の働きに最も重要な役割を果たす神経伝達物質である。ドーパミンの働きの異常に関係した病気であるパーキンソン病や統合失調症の患者は,前頭前野機能に関係した課題で成績が悪くなる。サルの前頭前野にドーパミンの阻害剤を投与してドーパミンを枯渇させると,サルは前頭前野が関係する色々な課題が出来なくなる。一方ドーパミンは欠乏だけでなく,多すぎてもこうした課題に障害を起こす。 脳科学辞典「前頭前野」より引用
『偏桃体』
情動(喜怒哀楽や恐怖などの急激な感情の動きのこと)反応を処理したり、情動的な出来事に関連する記憶の形成や貯蔵に関わる。
感情が伴う物事が記憶に残りやすいのは偏桃体の働きによるところが大きい。
偏桃体にはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの放出の信号を出す部位も存在する。
ちなみに、偏桃体を取り除くと喜びや怒り、不安や恐怖などの激しい感情の動きに対するさまざまな障害を引き起こします。
(扁桃体を含む) 側頭葉を損傷させたアカゲザルが社会的、情動的な障害を顕著に受けたという研究が存在する[15]。ハインリヒ・クリューヴァー (Heinrich Klüver) とポール・ビューシー (Paul Bucy) は後にこの観察された事実を拡張し、側頭葉前方の大きな損傷が、様々な対象に対する過剰反応、情動の低下 (hypoemotionality)、恐怖の喪失、異常性欲、口唇傾向 (hyperorality : 不適切な対象を口に運ぼうとする状態) などを含む目立った変化を引き起こすことを示した。また、あるサルは見慣れた物体を認知することが出来なくなり、生物、無生物に対して無差別に近づくようになったり、実験者への恐怖を示さなくなるなどの現象を示した。このような行動障害は、後に彼らにちなんでクリューヴァー・ビューシー症候群 (Kluver-Bucy syndrome) と名付けられた Wikipedia「扁桃体」より引用
「部分強化(間欠強化)」と 依存症
「強化」とは、「報酬などの刺激によって行動が増えること」を言います。
つまり、この「強化」が「依存症」を引き起こす要因になります。
ちなみに、罰などの刺激により行動が減ることを「弱化」といいます。
「強化と弱化」はいわゆる「アメとムチによって変化する行動の結果」です。
なかでも「部分強化(間欠強化)」は、依存状態を長くさせることができます。
「部分強化」とは、「行動によって得られる報酬がときどきしか発生しない強化」のことです。
ギャンブル依存やゲーム依存などがこの「部分強化」によって引き起こされます。
対して、行動によって毎回必ず報酬を受け取れることを「連続強化」といいます。
つまり、
- たまにしか報酬が得られない:「部分強化」
- 毎回必ず報酬を得られる:「連続強化」
です。
「報酬回路」を形成する段階では「連続強化」の方が効果的ですが、依存状態を長続きさせるのは「部分強化」の方が効果的です。
最近のソーシャルゲームではこの「連続強化」と「部分強化」をうまく組み合わせて運営しているパターンが主流になってきています。
ソーシャルゲームをしていて、最初は報酬が大量に得られてサクサクとゲームが進むのに、途中から急激に報酬が得られにくくなった経験はありませんか?
そして、いつの間にか課金をしてしまっている自分がいる…(経験談w)
そういう経験のある人は、この「部分強化と連続強化が組み込まれたゲームシステム」によって見事にはめられたということです。
※余談:日本に蔓延する「依存症」
「わが国には疑いのある方も含めると、アルコール依存症が230万人、ギャンブル依存症が536万人、インターネット依存症が270万人、タバコのニコチン依存症が1487万人いると推定されています。重複を省くと、およそ2000万人、日本人の6人に1人が何らかの依存症を抱えているという計算になるのです」(精神科医の和田秀樹さん)。
依存 状態 を引き起こす 習慣作り の コツ
インセンティブ(報酬)を与える効果的なタイミング
「強化」を引き起こすために報酬、つまり「ご褒美」を設定することが有効です。
ご褒美を得られることで、依存状態を生み出す「ドーパミン」が分泌されます。
さて、それではいつ報酬を受け取るのが効果的なのでしょうか?
結論から言うと、依存状態を引き起こす効果が一番高いタイミングは、「その習慣をやっている最中」です。
習慣、つまり行動をしている最中にドーパミンが発生することによって「あ、この行動をすると快感が得られるんだ!」ということを脳に教え込ませます。
つまり「脳をダマす」ということです。
「それでは習慣が終わった後でもいいのではないか?」と思いますが、タスクを完了してからドーパミンが発生するまでの時間が空いてしまうと強化の作用が弱くなります。
「行動→報酬を受け取るまでの空き時間→報酬→ドーパミン」では若干のタイムラグが生じるので、「行動中」にドーパミンを分泌させる方がより効果的といえるのです。
しかも、タスクを完了させた「達成感」でもドーパミンは分泌されるので、わざわざ報酬を設定する必要はありません。
ここで少し、考えてもみてください。
強い依存状態を引き起こすゲームやギャンブル、タバコやアルコールなどの「一番強く快感を得られるタイミング」はすべて「終わった後」ではなく「最中」であるはずです。
一番いいのは習慣の作業の中に「ドーパミンが分泌される行動」を組み込むことです。
しかし、習慣によっては難しい場合があります。
そこで、「習慣を始める直前に報酬」を得るというのもありです。
→ドーパミンが出る
→ドーパミンが出ているうちに行動を開始する※ちなみにゲームでよく見る「ログインボーナス」はこの仕組みに当てはまります。
ようは「習慣をやっている最中」にドーパミンが出ていればいいので、いろいろ自分がやりやすいやり方を試してみてください。
ドーパミンは報酬を想像しただけでも分泌される
実は、「報酬」というのは「もらえる」と想像しただけでもドーパミンが分泌されます。
「達成後のご褒美」でやる気が出るのはそのためです。
なので、作業前や作業中に「報酬をもらった自分の姿」を想像してみるのも手軽にできるのでおすすめです。
「報酬」を受け取る効果的なタイミングをまとめると、
- 習慣を行う直前:ご褒美を先にもらう、または受け取ったときの自分の姿を想像する
- 習慣中:快感を伴う行動
- 習慣後:タスクが完了したことによる達成感
の三段階でドーパミンを発生させるのが最も効果的といえます。
「快感」を習慣の入口に組み込む「快感スターター」
先ほどの項目でもお話ししましたが、「習慣」に快感が伴う行動を組み込むことで、習慣を「依存状態」にさせることができます。
特に、快感が伴う行動を一番エネルギーを使うスタート地点にもってくることで習慣への求心力を高めることができます。
「快感」をスタートの求心力にすることから、ここでは仮に「快感スターター」と呼ぶことにしましょう。
《快感スターターになる行動》
快感を習慣のスタートにするために「ドーパミンの分泌トリガー」を利用するといいでしょう。
「ドーパミンの分泌トリガー」とはつまり、「ドーパミンが出るきっかけになる行動」のことです。
やり方は「ドーパミンの分泌トリガー」を習慣のプロセスに組み込むだけ。
つまりは「ドーパミンが分泌される行動をしてから習慣に取り組む」ということです。
以下にドーパミンが分泌される代表的な行動をあげておきます。
なかには習慣化に使いにくいものもありますが、自分のやりやすいように応用してみてください。
- 食欲や性欲を満たす
- タスクを完了させる
- 好物の写真を見る(例えばケーキなどのスイーツ)
- (性的に)好きな人の写真を眺める
- 快感を得られる音楽を聴く
- ワクワク感を得られる新しい活動に取り組む
- メイク、またはおしゃれをする
- チョコレートを食べる
- ご褒美を設定する
- 欲しかったものを買う、手に入れる
- 給料、もしくは大金を手に入れる
- 成長の過程を振り返る
しかし、ここで一つ注意点があります。
「部分強化」の項目でも書きましたが、報酬はだんだんマンネリ化していきます。
そこで、習慣にご褒美を取り入れるのであれば、習慣を始めた頃は「連続強化」で毎回ご褒美を与え、習慣が続いてきたらご褒美を減らして「部分強化」に切り替えるのが効果的です。
または、報酬の内容をランダムに毎回変えるのもよいでしょう。
「2週間連続で続いた月末だけ報酬2倍」とご褒美に格差がつくような設定にするのも「部分強化」になるのでおすすめです。
タスク完了チェックリスト
チェックリストに完了マークを入れるだけでもドーパミンは分泌されることがわかっています。
たとえどんな小さなタスクであれ、「完了」することに対して脳は達成感を感じるからだそうです。
「タスク完了チェックリスト」の他のメリットとしては、チェックリストによって作業の進捗が視覚化されることで「目標の達成勾配」という心理作用が働きることです。
「目標の達成勾配」とは、「ゴールが近づくほどモチベーションが高まる心理」のことをいいます。
一番よく使われるたとえは、マラソン。
「もうすぐゴールだ!」とわかるとエネルギーが増して実際にスピードが上がるという現象が起こります。
他には、金曜日の夜など休日が近づくほど気分が高まりやすくなるのも、これも「目標勾配」による心理効果の影響によるものです。
やり方としては、習慣の段取りを細かく段階に分けてチェックリストを作ります。
「ノートを出す」、「机に座る」などのどんな小さなことでもOKです。
「チェックリストを用意する」という項目なんかでも構いません。
チェックリストを作るときは付箋やメモ用紙、もしくは簡単なメモアプリなどがおすすめです。
エクセルなど、ややこしいツールを使う必要はありません(あくまで本人とって一番早く簡単なやり方でOK)
チェックするだけで、ものすごく簡単にドーパミンを出してモチベーションを高めることができるので、ぜひ一度試してみてください。
3分間の筋トレ
習慣をする前に、軽く運動をすることでも「快感スターター」になります。
運動によって脳内の血流量や酸素量が増えることでもドーパミンは分泌されます。
運動後のスッキリ感や心地良さは、運動によって分泌される「ドーパミン」や「セロトニン」による効果が大きいです。
セロトニンについては以下の記事をご覧ください。
>>【健康】幸せホルモン『 セロトニン 』の機能と増やし方
自宅であれば腕立てやスクワットなど、その場ですぐできるのでおすすめです。
要は、脳の血流が増えればいいので、腕立て15回などめちゃくちゃ軽い内容でも全く問題はありません。
さらに、脳の血流や酸素量が増えることにより認知機能や集中力も高まるので一石二鳥です。
気をつけたい「 アンダーマイニング効果 」
「アンダーマイニング効果」とは「内的動機」で行っていた行動が「外的動機」に変化することでモチベーションが著しく低下してしまう心理現象のこと。
- 「内的動機づけ」:自分の内面からわき起こる好奇心や興味などにより動機づけられること。「自分がやりたいからやる」という自主的な望みなどが当てはまる。
- 「外敵動機づけ」:人からの称賛や報酬、罰などによる外的な要因により動機付けられること。
つまり、自ら望んでやりたいと思える習慣に対しては、ご褒美を設定するとむしろ長続きしなくなってしまう恐れがあるので注意が必要です。
「好奇心を満たすこと」がその人にとっての快感であるのであれば、それ自体がご褒美なのであって、わざわざ設定する必要はないということです。
まぁ、もともと「やりたい!」という自主的な高いモチベーションがあるのであれば、そもそも習慣をつづけさせるテクニックは必要なさそうですね。
依存 を利用した 習慣化テクニック まとめ
※ただし、自ら望んで「やりたい!」と思える習慣に関しては報酬を設定するとモチベーションが下がる場合があるので気をつける。
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