【メンタル強化】レジリエンスを高める5つのステップとおすすめ習慣
今回は、前回から引き続き「逆境適応力・レジリエンス」の具体的な高め方について解説していきます。
後半では、レジリエンスを日常的に高めていけるように「レジリエンスを高めるおすすめ習慣」も合わせて紹介していきます。
レジリエンスの必要性
レジリエンスを高めることで、以下のメンタルコントロールができるようになります。
- 立ち直りが早くなる
- ネガティブ感情からポジティブ感情への変換がうまくなる
- 他者のレジリエンスを高めることも容易になり、良好な人間関係を築きやすくなる
- 困難に意味を見出せる
- 「今の自分ができること」に意識を集中させることができる
レジリエンスの具体的な定義や仕組みについては、前回の記事で詳しく解説しているので、よかったら参考までに。
レジリエンスを高めるポイント
レジリエンスを高めるポイントは以下の6つです。詳細は上記に記載した前回の記事をご覧ください。
- 前頭前野の活性化(感情コントロールがうまくなる、問題解決能力が向上する)
- 偏桃体の抑制(不安、恐怖、怒りなどのネガティブ感情の抑制)
- 海馬の増大(困難を乗り越えたときの状況パターンを記憶する)
- 自己効力感(「私なら何があっても乗り越えられる」と信じられるようになる)
- 心理的柔軟性(失敗を失敗と捉えない、物事に意味を見出せるようになる)
- 社会的支援(誰か一人でも味方がいてくれることで心のセーフティゾーンが作られる)
レジリエンスを高める5ステップ
それでは、レジリエンスを高める具体的な方法を見ていきましょう。
大きな方法で5つのステップに分かれます。
- 感情と思考の分析
- ポジティブ感情の回路の強化
- 建設的な思考
- 心のセーフティーゾーンの構築
1自己認識を深める(感情と思考のラベリング)
まずは自分の思考と感情を正しく理解するところから始めます。
目的
「メタ認知」と呼ばれる、自分を客観的に見る能力を向上させることで、思い込みによる「ネガティブな自動思考」を防止していく。
実用例
-
「感情の観察」(感情ラベリング)
「私は今イライラしている」「○○で不安だ」「~が起こって悲しい」という風に、自分の今の感情に名前を付けることで、ネガティブ感情の暴走の原因になる「偏桃体」を抑制することができる。
-
「思考の観察」(事実の確認、思い込み回避)
「感情の背景にある思考」を客観的に観察していきます。
例えば、人に冷たくされたときに、「なぜか知らないけど嫌われてしまった…私の話し方が気に入らなかったに違いない」とか「なんて嫌な奴なんだ、許せない」と思い込むことがあります。
そこで、その思い込みだけで終わらせるのではなく、「なぜあの人はあんな態度をとったのだろう?たまたま何か嫌なことでもあったのだろうか?」「私の発言に嫌われる要素があったか?」「あの人の価値観、物事にイライラするときってどんなときだろう?」など多角的に物事を分析していくことが大切です。
そして事実の確認。
「あの人は今イライラしている」「誰に対しても似たような態度だ」「私だけが特別嫌われたわけではない」「あの人は最近彼氏と喧嘩して落ち込んでいるらしい」「あの人の精神状態は今不安定な状態にある」「あの人の態度には傷ついたけれど、私がつられてイライラしてもしょうがない」…
などなど。
事実ベースで物事を分析していくことで理性的に物事をとらえるようになるので、感情をコントロールもしやすくなっていきます。
2ポジティブな感情を育む(感謝と喜びの習慣化)
続いて、レジリエンスの重要な要素の一つである「ポジティブ感情」を増やしていきます。
目的
ネガティブ感情に飲み込まれないようにするためには、ネガティブ感情を消す努力をするのではなく「ネガティブ感情をポジティブ感情で上書きする」のが有効です。
ポジティブ感情を意識的に生み出せるようになることで、「脳の報酬系」も活性化され「ドーパミン」が分泌されます。
その結果、脳全体が活性化しやすくなりストレス耐久値も高めることができます。
実用例
-
「感謝の日記」「達成リストの作成」
一日の終わりに、その日の良かった出来事=ポジティブ感情がわいた出来事を振り返ることで、ポジティブ感情を呼び起こす練習になります。
内容は「コーヒーがおいしかった」「○○さんが笑顔で挨拶してくれた」「大事な課題に取り組めた」など、どんな些細なことでもOK
とにかく、ちょっとでもいいので「ポジティブな感情を思い出す」ことが大切です。
ポジティブ感情が湧いてくるときに使う脳の回路を日常的に多く使うことで、回路が強化され、ポジティブ感情を出すのがだんだん容易になっていきます。
また、その日に達成したことをメモするのも、「ドーパミン」が湧きやすくなるので有効です。
3問題解決能力を高める(建設的な対処法の習得)
次に、物事を「建設的」に改善していくために、問題解決能力を高めていきます。
目的
問題や困難に直面した時に、それを乗り越えるために必要な具体的な行動をとれるようにしていきます。
実用例
- 問題の細分化(課題分析)
- ブレインストーミング(解決策の網羅)
- スモールステップ(小さな達成の積み重ね)
まずは、今直面している問題を細かく分析していきます。
例えば、学校の成績が悪くて落ち込んでいる際に、何が課題であるか明確にしていきます。
数学の成績が悪いのか、暗記科目が苦手なのか、文書理解力が低いのか…というように、問題のネックになっている部分を具体的にしていきます。
次に、解決策につながるアイデアを思いつく限り洗い出していきます。
「教科書に載っている公式をすべて書き出して、ひとつづつひたすら分解して理解する」「運動や瞑想によって脳細胞を増やして記憶容量を上げる」「制限時間を決めてひたすら計算問題を解きまくる」「知識をリスト化して網羅情報を一度に把握できるようにする」「日ごろから主人公や登場人物になりきって物語を読む習慣を身に付ける」などなど…
とにかく「これは使えそう」と思える解決策を片っ端から上げて試していく。
そして「これは私には効果があるな」と思えるものが見つかったら、あとはひたすら繰り返すだけ。
このとき、「疲れた」「だるい」「やる気が出ない」など、どんなメンタルの状態でも始められるように、簡単なステップに分けておくことも大切。
例えば、「教科書を開いて1行だけ書けばとりあえずOK」「疲れているときは書いてあるリストを読み上げるだけにする」など。
4社会的つながりを強化する(サポートシステムの構築)
「感情の観察」「ポジティブ感情の増大」「建設的な思考」ができるようになったら、続いてレジリエンスにおける重要な要素の一つである「心のセーフティゾーン」の構築をしていきます。
目的
「困難なときにでも頼れる存在がいる安心感」があることで、レジリエンスを大きく高めることができます。
悩みを打ち明けることで共感を得たり、他者の視点からのアドバイスを受ける経験が心を軽くしたりすることで、思い込みから脱却しやすくなるきっかけが得やすくなります。
実用例
- 「信頼できる人との交流」
- 「グループ・交流会への参加」
- 「与える経験を増やす」
とにかく、一人でもいいので心の支えになる人を見つけるのが大切です。
どうしても人と関わるのが苦手な人なのであれば、「憧れの存在」を心の中に置くのもおすすめです。
「この人ならこうゆうときこうする」とか「あの人はこんなことであきらめない」など、セルフトークを繰り返すことで心の支えを作り出すことができます。
ぜひ騙されたと思って一度試してみてください。
5セルフケアを習慣化する(心身の健康維持)
最後に、「心の健康」を保つ、改善するためにできる「セルフケア」の習慣を身に付けていきます。
目的
「心の癒しになる」習慣を身に付けることで、傷ついた心を早く回復させる力を高めていきます。
特に精神状態を良好に保つことは、レジリエンスを高める土台になるので、日ごろから「セルフケア」の意識を持つことは大切です。
実用例
- 快適な睡眠環境を整え、質の高い睡眠をとる
- 脳の機能を維持するための、健康的な食事をバランスよくとる。
- 定期的な運動の実践により、ストレス値を減少させる
- 自分に合ったリラックス方法で、精神疲労を取り除く
レジリエンスを高めるためには、もちろん「脳の状態」をよくする必要があります。
特に睡眠の質の低下は、感情の抑制を行う前頭葉の機能下げ、感情コントロール能力や判断力の低下につながるので、日ごろから睡眠の質の向上には特に気を付けていく必要があります。
また、「安心感」や「幸福感」など心の健康やバランスを保つために有効な「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質を出すために、乳製品や大豆製品に含まれる「トリプトファン」を積極的に取り入れるのも効果的です。
レジリエンスを高めるおすすめ習慣
最後に、レジリエンスを日常的の高めることができるおすすめ習慣を紹介していきます。
ぜひ、いろいろ試してみて自分に合ったやり方を見つけてみてください。
1「感謝ジャーナル」
- 目的・効果:ポジティブ感情の増加、脳の「報酬系」の強化。ポジティブ感情が湧くときに働く脳の回路を頻繁に使うことで、ポジティブ感情を呼び起こすのが容易になっていく。
- やり方:寝る前、もしくは寝起きに、紙やノートにその日一日の「感謝したい出来事」を書き出す。例えば、「昼食で食べたおにぎりが抜群にうまかった」「~さんが仕事を手伝ってくれた」「店員が親切だった」「推しの配信が今日も面白かった」など、ありがたいと思える出来事ならなんでもOK
- ポイント:「ポジティブ感情」が思い出される出来事であることが大切。「嬉しい」「楽しい」「満足」「安心」「幸せ」など。
2「マインドフルネス瞑想」
- 目的・効果:「前頭前野」を活性化させ「偏桃体」を鎮静する。ストレス反応が和らぎ、感情コントロールもしやすくなる。
- やり方:1~3分間タイマーをセットし、その間「息を吸う感覚」「息を吐く感覚」のみに意識を向けながら呼吸を繰り返すだけ。
- ポイント:呼吸をしながら頭の中で「吸って」「吐いて」と唱えながら行い、他の思考が浮かんでこないようにすることで、より呼吸に意識を向け続けやすくなる。
3「達成リスト」
- 目的・効果:「達成感」を味わうことで、自己効力感の向上、ドーパミンの分泌、「次も頑張ろう」と思える意欲の向上などの効果を得られる。
- やり方:一日の終わりに、「今日達成できたこと」「約束通り(有言実行)できたこと」を紙やノートに書き出し、達成感を味わう。「達成ノート」を作って、定期的にそれを見直すのも有効。
- ポイント:どんな些細なことでも「達成できた」と思えるようになることが大切。スモールステップの大切さを実感することで、より習慣が続けやすくなる。
4「リフレーミング」
- 目的・効果:出来事の解釈を変える練習。認知のゆがみを修正し、レジリエンスの重要な要素の一つである「柔軟な思考」を促す。
- やり方:何かを間違えたときのできごとや、ネガティブな出来事を思い出し、「その出来事の意味」や「改善策」を考え出す。例えば、スピーチがうまくいかなかったとき、「スピーチは苦手だ」と言って片付けるのではなく、「スピーチをする意味や目的」「私が本気で伝えたかったたった一つの思い」「スピーチのうまい人はどんなマインドでいるのだろうか?」「もっと準備できたことは何か?」など、「スピーチを上手にやること」以外のポイントに思考を使うようにする。
- ポイント:あらゆる出来事を「人生の良い経験値・教訓」ととらえて、「次につながる」思考になるように建設的に考えることが大切。
5「感情ラベリング」
- 目的・効果:偏桃体の鎮静による、ポジティブ感情の暴走を防ぐ。「自分への感情」を正しく認識するための練習。
- やり方:一日に数回、なんでもいいので感情が湧いた瞬間に「どんな感情なのか?」「どんな気分なのか?」「体に何か影響はないか?」という風に「自分の内側の感覚に目を向ける」癖を身に付ける
- ポイント:感情をラベリングした際、感情の裏側にある「なぜこの感情になったのか?」をすかさず問いかける癖を身に付けておく。そうすることで、理性的に感情をとらえられるようになり、感情コントロールも容易になる。
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