【目標設定】「マズローの欲求段階説」と「自己実現」の本来の意味
今回は、「 自己実現 」の本来の意味と「 マズローの欲求段階説 」を利用した目標設定の方法について解説していきます。
以下の項目に当てハマる方におすすめです。
- 人生の目標を決める効果的な方法を知りたい。
- マズローの欲求段階説について知りたい。
- 自己実現への理解を深めて目標に応用したい。
関連記事:>>【 モチベーションの心理学 】達成率 を高める 目標設定 の コツ
マズローの「欲求5段階説」
「マズローの「欲求5段階説」とは、アメリカの心理学である「アブラハム・H・マズロー」が定義した『自己実現を最上の欲求とした人の欲求の階層を解明した理論』のことです。
自己実現理論(じこじつげんりろん、英: Maslow’s hierarchy of needs)とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものである。Wikipedia「自己実現論」より引用
この理論によると、人間の欲求には段階があり、「下位の欲求が満たされたときに上位の欲求は表れる」とされています。
《マズローの欲求の5段階説》
- 『生理的欲求』
- 『安全欲求』
- 『社会的欲求(所属や愛の欲求)』
- 『尊厳の欲求(承認欲求)』
- 『自己実現欲求』
- 『自己超越欲求』
1、『生理的欲求』
生命活動を維持するために必要不可欠な欲求のこと。
生物が生存し続けるための本能に最も近い。
2、『安全欲求』
安全な環境、暮らしへの欲求のこと。
経済的に不安定な生活からの脱出や、清潔で安全な環境で生活したいと望むことなどがこれに当たります。
『生理的欲求』と『安全欲求』は「衣食住」を充実させること、つまり物質的な物で満たされることから「物質的欲求」とも分類されています。
一方、後述する『社会的欲求』『承認欲求』『自己実現欲求』『自己超越欲求』は精神的な活動によって満たされることから『精神的欲求』とも分類されています。
- 「生理的欲求」「安全欲求」:「物質的欲求」
- 「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」「自己超越欲求」:「精神的欲求」
3、『社会的欲求』
社会的集団に所属する安心感への欲求のこと。
「所属や愛の欲求」と呼ばれることもあります。
4、『承認欲求』
所属する集団の中で自分の能力や価値を認めてもらいたいと願う欲求のこと。
「自尊心を満たしたい」という衝動からくる欲求とも言えることから「尊厳の欲求」とも呼ばれています。
たとえば「人から好かれたい」「褒められたい」「正しく評価されたい」などが当てはまります。
「承認欲求」については以下の記事で詳しく解説しております。参考までに。
>>【メンタル改善】 承認欲求 が強くなる原因とコントロールする方法
5、『自己実現欲求』
「自分の能力を最大限に引き出しながら、自分にしかできないことを成し遂げたい」という欲求のこと。
「ないものを付け足す」のではなくて、「本来持っているものを高めていく」という発想が自己実現です。
「○○を活かして~できるようになりたい」「もっと○○を高めたい」などが「自己実現欲求」に当てはまります。
たとえば、
- 「もっと経済力を高めて、優雅な暮らしがしたい」
- 「もっと学習能力を高めて、東大に入りたい」
- 「もっと美的センスを磨きたい」
- 「歌唱力を活かして、プロの歌手になりたい」
- 「英語力を活かして、海外に移住したい」
- 「特技を活かしてギネス記録を更新したい」
などです。
ちなみに、「生理的欲求」から「承認欲求」の1~4までの欲求は「足りないもの」を満たしたいという衝動からくるので「欠乏欲求」とも呼ばれています。
対して、この「自己実現欲求」は「自分はこうだったらいいな」という理想にむかって自己の人生の向上を求めることから「成長欲求」とも呼ばれています。
「欲求の階層」の分類分けを簡単にざっくり説明すると以下の通りです。
- マイナスをゼロの状態に近づける→『欠乏欲求』(生理的~承認欲求)
- ゼロをプラスの状態にする→『成長欲求』(自己実現欲求、自己超越欲求)
6、『自己超越欲求』
「自己実現論」を発表した当時、人間の欲求の階層は「5段階説」という呼称の通り「生理的欲求」から「自己実現欲求」までの5段階でした。
しかし、「自己実現欲求」について間違った解釈が世の中に拡散していると感じたマズローは、「自己超越欲求」を6番目の欲求として新たに定義しました。
「自己超越欲求」とは、いろんな解釈がありますが、簡単に言うと「自分だけの範囲にとどまらない自分ではない誰かの幸福を、『見返りを望まずに』求める欲求」のことを言います。
「世の中をより善く変えていきたい」「人々の暮らしを豊かにする発明や活動をしたい」などがこれに当たります。
「自己実現欲求」の補足として付け加えられた経緯からイメージできる通り、「自己超越欲求」は『自己実現』の延長上にある欲求です。
どちらも「自分の今持っている能力を最大限使って何かを成し遂げたい」と望む欲求であり、両者の違いは単にモチベーションが「自分のできる範囲を超えているか」どうかです。
わかりやすく言うと以下のようになります。
- 「自己の成長を求め自分の能力を最大限100%出し切れる状態にすること」→自己実現
- 「世の中や他者のために100%以上の力を引き出すこと」→自己超越
ちなみに、目的の内容によっては「自己実現欲求・自己超越欲求」と「自己承認欲求※」とで、どちらともとれる場合があります。
「痩せてモデルのような体系になって自分自身がかっこいいと思える人になりたい」とか「資格を取って昇給して給料を上げたい」など。
「自己評価」を高めるために成長を望む欲求とも言える。
たとえば「世の中を変える発明をしたい」という目標があった場合、それが「歴史に名を残したい」という「名声」のため(つまり自分のため)なのか、本当に「自分の発明で多くの人々を幸せにしたい」のかの本心は本人にしかわかりません。
「おいおい、他者のためと言いながら結局は自分のためじゃん!w」と思われる場合があるので、恐らく「自己超越欲求」には「無私無欲」という条件がついたのでしょう。
「自己超越」に関しては、以下の記事もおすすめです。参考までに。
>>【簡単】モチベーションが長続きする「 自己超越目標 」の設定方法
『自己実現理論』の「心理学」としての評価
実はこの「自己実現理論(欲求5段階説)」は、「自己実現が最上である」と「仮定」した上で展開された理論であるため科学的な根拠が貧弱とされており、「心理学」の一般原理としては認められていません。
また、被験者のサンプル数も少なく「実証不足感」も否めないのも確かです。
それに加えてこの理論は、「西洋的」な文化圏の価値判断によるバイアスがかかっているとされており、他の文化圏にはこの階層の順番が当てはまらない場合もあるとされています。
まぁ、そもそも、人によって「どの欲求が一番大切か」が違う上に「人間の価値観」は非常に主観的なものです。
そこに優劣をつけること自体が疑わしく、絶対はないので、「根拠薄弱だ!」と言われてもその通りな気がしますね(個人的な感想です)
「食欲や社会的欲求が満たされれば『自己実現』は必要ない」と考える人もいれば、「自己超越欲求」さえ満たされれば、たとえ「安全欲求」や「生理的欲求」が満たされていなくても大満足」という人もいるわけです。
(「夢をかなえるためならばどんな危険や犠牲もいとわない」的なねw)
なので「低次の欲求が満たされて初めて次の欲求が生じる」という理論は、あまり当てはまらないような気がします。
「ある欲求の階層で、一度でもその欲求が満たされた経験があればOK」みたいな謎理論がありますが、どうも理論を破綻させないために無理やりねじ込んだ後付け感が否めませんね(笑)
ただ、著者のマズローは「人間心理学の最も重要な生みの親」と呼ばれ、「アメリカ心理学会会長」を務めるなどエビデンスのある「人間心理学」の分野に精通しており、『自己実現理論』は経営学など様々な分野にも多大な影響を与えてきた実績があります。
なので、「理論」としては弱くても、この『自己実現論』に出てくる「6つの欲求」のそれぞれの内容に関していえば、全くの無根拠と言ううわけでもありません。
たとえば、マズローの言う「下の階層の欲求が満たされて初めて高次元の自己実現欲求が生まれる」という理論は「文化圏や人によって違うのでは?」という反論を否定できていないですが、人間を含めた生物にはほぼ「生理的欲求」や「安全欲求」などの欲求が生まれつき備わっていることは事実です。
世の中に広まっている「自己実現」の間違った解釈
「自己実現」と聞くと、「自分の理想を叶える」だとか「能力開発」といったイメージが一般的にされやすいです。
ですが、マズローの「自己実現理論」に出てくる「自己実現」とは少し意図が異なります。
マズローの「自己実現」は原文では「Self Actualization」と表記されています。
これは「自己実現」以外に訳すると「自身を現実化する」という意味です。
つまり、「自分のできることや自分のやりたいことを明確にして、自分の能力を最大限引き出せる状態にすること」が本来の「自己実現」。
つまり、潜在能力の50%を100%出し切れる状態にすることであり、50%を200%とか300%にするとかそういう話ではないということです。
こういった性質から、「自己実現」は「100%の自分=ありのままの自分になること」と解釈されることもあります。
※余談ですが、一時期「自分探し」という言葉がはやりましたが、恐らくこの「自己実現」のための「自己探求」から派生した可能性が高いです。
まとめると、「自己実現」はスキルを磨いて今の自分にないものを追求する「スキル開発」だけではなく、「自己把握」と「本来備わっている能力の向上」が本来の意味に近いです。
繰り返しますが、「自己実現」は「自分の持っているものを正確に把握して、自分の強みをいつでも発揮できる状態にすること」という意味になります。
以下に、マズローが定義した『自己実現者』の特徴をあげておきます。
自己実現者の特徴
- 現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ
- 自己、他者、自然に対する受容
- 自発性、素朴さ、自然さ
- 課題中心的
- プライバシーの欲求からの超越
- 文化と環境からの独立、能動的人間、自律性
- 認識が絶えず新鮮である
- 至高なものに触れる神秘的体験がある
- 共同社会感情
- 対人関係において心が広くて深い
- 民主主義的な性格構造
- 手段と目的、善悪の判断の区別
- 哲学的で悪意のないユーモアセンス
- 創造性
- 文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越
Wikipediaより引用
まとめると、「思考の偏り」がなく「寛容」で「自立心」があり「創造的」で「コミュ力の高い」「優れた人格者」といったところでしょうか。
なんか、個人的な感想を言わせてもらうと、「人間の本質を科学的に解明する心理学」というよりは、ただ単に「マズローの理想の人間像」というような印象を受けますね(笑)
「根拠薄弱」といわれるのはこういうところもなのでしょうか?
五段階欲求を利用した目標設定の方法
さて、ここからは実践編です。
「今現在なにも目標がない」という人は、この「欲求の五段階説」をそれぞれ満たす目標を立ててみるのをおすすめします。
「欲求」に根差した動機付けがされた目標なので、比較的モチベーションを保ちやすく、高い充実感が得られるはずです。
目標の設定方法は簡単。
「それぞれの欲求に関する目標を考えて、それを実現させるための行動を書き出すだけ」です。
たとえば、以下のように分類できます。
1.「生理的欲求」と「安全欲求」=「衣食住」暮らしを豊かにする
- 収支を安定させる
- 生活環境を整える
- 睡眠の質などの健康面の悩みをなくす
…など。
2.「社会的欲求」と「承認欲求」=「人間関係」コミュニティーを充実させる
- 人と仲良くなるためのトーク力を磨く
- 共感能力を高める
- 職場の人間関係を良くする
- 恋人や友人などの良質な人間関係を築く
- 趣味のコミュニティーに参加する
…など。
3.「自己実現欲求」と「自己超越欲求」=「志」人生の理想を叶える
- 国家資格を取る
- 豪邸に住む
- 不労所得を得て自由に使える時間を増やす
- 電子書籍を出版する
- インフルエンサーになる
- 起業する
など…
自己実現 まとめ
- 「生理的欲求」とは、食欲や性欲などの生きていくうえで欠かせない動物的な欲求のこと
- 「安全欲求」とは、経済的、環境的に快適で安全な暮らしへの欲求のこと
- 「社会的欲求」とは、社会的な集団から受け入れられたいと望む欲求のこと
- 「承認欲求」とは、自他ともに「自分への評価」を高めたいという欲求のこと
- 「自己実現欲求」とは、「自分の能力を最大限発揮できるようになりたい」と望む欲求のこと
- 「自己超越欲求」とは、自分だけでなく多くの人々にプラスの影響を与えていきたいと望む欲求のこと
- 「自己実現」の本来の意味は「自分の能力を最大限いつでも発揮できるようにする」こと。「ありのままの自分になる」と解釈されることもある。
コメント