勉強が楽になる 記憶術 のやり方とコツ【効果の高い記憶術TOP3 】
前回からのつづきで、今回は 記憶術 についてわかりやすく解説していきます。
前回:>>【脳力UP】 記憶 の原理と物覚えを良くする6つのコツ
さて続いては、記憶力を高めるテクニックとして、世界的にも多く使われている「実践的な 記憶術 」についてご紹介していきます。
少しコツがいるかもですが、使いこなせればかなり強力なものばかりです。
記憶術 1. 場所法 (記憶の宮殿・メモリーパレス)
『場所法』とは、紀元前500年ごろの古代ギリシャの詩人、シモニデスが使ったのが起源と言われている記憶術です。
現代では、「記憶の世界大会」に出場する9割以上の選手が使用するほど強力な記憶術として有名。
『原理』
人は「場所の記憶」が最も得意とされています。
なぜなら「場所の情報」は生き延びるためには必須な情報だからです。
「場所を覚える」ということは「生存本能」と結びついているため重要度が高く、記憶に残りやすいという仕組みです。
迷子になる=仲間のもとや安全圏(家)に帰れなくなる=生存率が下がる。
という流れ。
なので、生存確率をより高めるために「場所の記憶」がより強固にできるように進化してきたわけです。
また、海馬には「場所ニューロン」と言われる神経細胞があり、それぞれの場所の情報をすぐさま記憶することができます。
つまり脳は、文字などの情報の記憶に比べて「場所に関する記憶の負担」が圧倒的に少なく、楽に記憶できるような仕組みになっているのです。
現時点では「場所に結びつける記憶」が記憶術のなかでは最強と言われています。
ただ、手順が多いので、上級者向けと言った感じですね。
『やり方』
- 場所を決める
- アクセスポイントを決める
- ルートを決める
- アクセスポイントと記憶の対象を関連付けする
1.場所を決める
「自分の部屋」を設定することが最もポピュラー。
他には、自分が「よく通った通学路」など日常的に馴染みのある場所を指定する人も多い。
自分の体のパーツ(足先から頭のてっぺんまで)でもOK。
2.アクセスポイントを決める
「場所」を決めたら今度は、覚えるものと結びつける具体的な箇所(パーツ)を決めていきます。
- 「部屋」であれば「机」「本棚」「窓」「椅子」「ポスター」など
- 「身体」であれば「右手」「左肩」「右足の親指」「首」「顔のパーツ」など
3.ルートを決める
「アクセスポイント」が決まったら今度はポイントを辿る「ルート(順番)」を決めていきます。
ルートを決めることで順番を覚えることができ、また、前後の情報のつながり「関連化」(一つ覚えたらそれとつながっている情報も引き出されやすくなること)もできるので記憶をより強化することができます。
4.関連付けをする
「アクセスポイント」と「記憶の対象」をイメージで結び付けていきます。
例えば、アクセスポイントが「右手」で、
覚えたいものが「ハチミツ」だったとします。
そしたら「右手」が「ハチミツ」まみれで「べたべた」になったところを「イメージ」します。
ポイントはただ一つ。
イメージに「インパクト」をもたせることが大切です。
非日常的な「違和感」があることで印象に残りやすく、頭に引っ掛かりやすくなります。
(ちなみに「違和感=危険の可能性」を嫌うのも生存本能に結びついた特性です)
「○○(記憶の対象)が△△(アクセスポイント)で××(インパクト)になった」
上記のようなテンプレートに当てはめてイメージすると、場所法はやりやすいかもです。
記憶術 2. ストーリー記憶
これも『場所法』と同じ「関連化」を狙った記憶方法です。
具体的には、単語などのばらばらの情報を結びつけるための「ストーリー」を作り、そのストーリーの流れをイメージしながら記憶していきます。
『やり方』
1.覚えたいもののイメージを抜き出す
2.抜き出したイメージをすべて並べる
3.順番通りイメージ同士をつなぎ合わせてストーリーをつくる
4.つくったストーリーを頭の中でアニメーション化する
『実践例』
- イルカ
- バナナ
- らっこ
- アメリカ
- エッフェル塔
- 海
- 算数
- けん玉
- 五目チャーハン
- 腕立て伏せ
さて、今思いついた単語を適当に並べてみました。
今回は、『ストーリー記憶』を使ってこれらの単語を覚えてみましょう。
1.覚えたいもののイメージを抜き出す
まずはそれぞれの単語のイメージを抜き出していきます。
ですが、基本的にはイメージしにくいもの(目に見えないもの)だけで大丈夫です。
そのまま使えそうなもの(イメージを他の単語とつなげやすい単語)は、そのままでも構いません。
- イルカ→そのまま使える
- バナナ→そのまま
- らっこ→そのまま
- アメリカ→ビッグな米
- エッフェル塔→ちょっとおしゃれなタワー
- 海→そのまま
- 算数→数を数えるそろばん
- けん玉→そのまま
- 五目チャーハン→野菜だらけのカラフルなチャーハン
- 腕立て伏せ→筋肉ムキムキの男
ポイントは変換した単語に「修飾語」をつけることです。
なぜなら、変換後を単語のみにしてしまうと、思い出す際に元に戻すことを忘れてしまう場合があるからです。
たとえば、算数→そろばんに変換して覚えたはずなのに、元に戻した際に「算数」ではなく、「そろばん」のみを思い出してしまう場合があります。
修飾語をつけることで「あ、これは何かから変換された単語だな」と気づくことができるので、想起(思い出すこと)ミスを防ぐことができます。
2.抜き出したイメージをすべて並べる
イルカ、
バナナ、
らっこ、
ビッグな米、
ちょっとおしゃれなタワー、
よく晴れて輝く海
数を数えるそろばん、
けん玉、
野菜だらけのカラフルなチャーハン、
ムキムキの男
どうですか?
ただイメージを並べただけですが、これだけでもなんとなくイメージが勝手に動き出そうな気がしてきませんか?(笑)
3.イメージ同士をつなげてストーリーをつくる
さて、ここからはいよいよストーリーをつなげていきます。
ポイントは主に3つだけです。
- 前後を入れ替えない
- 動きや映像エフェクト(きらきらや炎が燃える感じなど)をつける
- ツッコミを入れたくなるようなアホらしいイメージの方が印象に残りやすい
- 笑顔の「イルカ」が、陽気に「バナナ」を食べている
- 「バナナ」を食べたら、「らっこ」になった(煙のエフェクト)
- 「らっこ」になったとたん、「ビッグな米」が食べたくなった(お腹の音が鳴る)
- 「ビッグな米」を食べるために、「ちょっとおしゃれなタワー」にある有名なお店に向かうことを決めた(ひらめきー電球マーク)
- 「ちょっとおしゃれなタワー」の後ろには、よく晴れて輝く「海」が広がっている(きらきらエフェクト)
- 「海」では「数を数えるそろばん」をシャカシャカさせながら踊っている男がいた
- 「数を数えるそろばん」が急に欲しくなったので、偶然手に持っていた「けん玉」と交換してもらった
- 「けん玉」をあげたら仲良くなったので、その男が好物だという「野菜だらけのカラフルなチャーハン」を一緒に食べに行くことになった
- お店に入ったら「野菜だらけのカラフルなチャーハン」を食べている、「ムキムキの男」で店内があふれかえっていて、ふたりで驚いた
どうでしょう?
つくったイメージが、バカらしければバカらしいほど成功です(笑)
4.作ったストーリーを頭の中でアニメーション化する
あとはなるべく「文章」ではなく「アニメーション」として、作ったストーリーを順番にイメージしていくだけです。
やってみるとわかりますが、めちゃくちゃ楽しいうえに、発想力も高まるのでおすすめです。
ちなみに、今回覚えた単語を順番に言ってみてください。
イルカ、バナナ、らっこ、アメリカ、
エッフェル塔、海、算数、けん玉、
五目チャーハン、腕立て伏せ
でした。
どうです? 割とスラスラ出てきたのではないでしょうか。
しかも、ちゃんと順番通りに(笑)
(ちなみにこの単語は、実際にメモを見ずに書くことができました)
コツは、ストーリーをつくるコツでも書かせていただきましたが、
「動き」と「エフェクト」をしっかりイメージすることです。
記憶術 3. エピソード記憶 (感情+五感)
最後にご紹介するのは『エピソード記憶』です。
自分の体験したこと、時間や場所、その場の状況などとそのとき感じた感覚とをセットで覚える記憶方法です。
人から聞いた話を記憶する際にも使うことができます。
「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのようにしたのか」を関連性を持たせてセットで記憶します。
『ストーリ記憶』と似ていますが、『エピソード記憶』とはプロセスが異なります。
- ストーリー記憶は、イメージを繋ぎ合わせるためのストーリーをつくる「イメージ主体」の記憶。
- エピソード記憶は、事実と経験、体験を通して出た感覚や感情を結びつけて(関連化させて)記憶を強化する「感覚主体」の記憶。
『エピソード記憶』のポイントは「感情」と「五感」とを結びつけることです。
「五感」は「感情」を想起しやすく、また、「五感」「感情」「関連化」の3つの記憶の相乗効果を得ることができるのでかなり強力です。
『感情』と『五感』を利用した記憶の仕組みは前回の記事でもご紹介した記憶のコツの通りです。
簡単におさらいすると、
- 感情が動く=生存に関わる状況である場合が多い=記憶する必要がある→記憶されやすい。
- 五感を使う=危険を察知するための重要な情報=記憶されやすい。
『エピソード記憶』は「感情」と「五感」とを結びつけることがおすすめです。
「五感」は「感情」を想起しやすく、また、「五感」「感情」「関連化」の3つの記憶の相乗効果を得ることができるのでかなり強力です。
『やり方』
- 体験したこと、もしくは聞いたことの場面を整理する
- 場面ごとの事象と行動をすべて並べる
- 出来事に対する感情をイメージする
- 五感からの情報を補足する
『実践例』
童話『桃太郎』を覚える
1.体験したこと、もしくは聞いたことの場面を整理する
- いつ:昔々
- どこで:川、おじいさんとおばあさんの家、旅の途中、鬼ヶ島
- 誰が:桃太郎、おじいさん、おばあさん、イヌ、サル、キジ、鬼、鬼の親分
- 何を:仲間を集めながら鬼退治に行く
- なぜ:人々を困らせる悪い鬼を退治したいから
- どのように:鬼ヶ島に仲間とともに乗り込み闘う
場面の整理は、上記の様に5W1H(When,Where,Who,What,Why,How)
に当てはめていくのが、全体の大きな枠組みが把握できてよいです。
2.場面ごとに事象と行動を時系列にすべて並べる
『桃太郎との出会い~幼少期』
- おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行く
- おばあさんが川から流れてきた大きな桃を拾う
- 家でおじいさんと一緒に桃を開けたら中から男の子が出てくる
- こどものいなかったおじいさんとおばあさんは大喜びする
- 桃太郎と名付けられすくすく育つ
『鬼ヶ島にたどり着くまで』
- 桃太郎はある日「鬼退治」に行くことを決意する
- おばあさんがきび団子を桃太郎に持たせる
- 道中、「きび団子をもらえること」を条件にイヌ、サル、キジが仲間になる
『鬼ヶ島上陸~エンディングまで』
- 鬼ヶ島では、鬼たちが村から盗んだ宝やご馳走を並べて宴会をしている
- イヌ、サル、キジ、桃太郎はそれぞれの得意技で鬼たちを次々倒していく
- あまりの強さに鬼の親分はついに降参し、手をついて謝る
- 桃太郎一行は宝を持ち帰り、桃太郎はその宝で裕福におじいさんおばあさんと一緒に幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし
ここですることは、主に「行動の振り返り」です。
おおまかな行動を時系列でつなげていくことで、ストーリーの大きな流れを把握していきます。
前後の行動同士をつなげることで「関連化」(情報同士を関連性をもたせながら連結させること)を狙うことができるのです。
3.出来事に対する感情をイメージする
- 川から大きな桃が流れてくる →「何事か!」という驚きと「おじいさんへのいいおみやげになる」というおばさんの喜びをイメージする
- 桃から元気な男の子が飛び出す→「まさか!」という驚き
- きび団子を条件に鬼退治に同行するイヌ、サル、キジ→「どんだけきび団子が魅力的だったの!?」という驚きとユーモア
- イヌ、サル、キジ、桃太郎が鬼ヶ島で暴れまわり、鬼が降参する→「いや、鬼弱すぎwというか桃太郎一行強すぎない?」という驚き
- 手に入れた宝を元あった村には返さずに、自分達だけで使って幸せに暮らす→「いや、けっこう桃太郎もあくどいな笑」というユーモア
→総合的に見ると『桃太郎』は基本的に「驚き」が主体の物語なんだな。
と認識できる。
コツは、ひとつひとつの出来事に「ツッコミ」もしくは「解説」を入れると感情を分析しやすいかもです。
「ツッコミを入れる」=「印象的な状況」である場合が多く、印象を覚える手掛かりを見つけやすくなります。
4.イメージできる五感からの情報を補足する
- 川から拾った大きな桃を持ち帰る→服とか濡れるし、重くて運ぶの大変そう(笑)
- きび団子で簡単に仲間になる動物たち→きび団子美味しそう(今まで食べた好きなお菓子の味を思い出す)
- 鬼ヶ島で暴れる桃太郎一行→鬼の叫び声、桃太郎が振り回す刀の音、激しい戦闘音
など。
五感を覚えるコツは、「自分の類似する他の経験を思い出す」といいです。
「大好物を食べているときの満足感」とか「暑い日に吹く南風の爽快感」「アニメや映画とかで聞いた効果音」など。
感情もそうですが、五感には「はっきり言葉にできない微妙な感覚」もあります。
なので、自分の過去の経験から感覚を思い出すことが効果的です。
「○○のような感覚」という覚え方でも、既存の記憶との「関連化」も狙えるので、記憶を強化させる効果があります。
大事なことは「自分の感覚」をイメージできるかどうかです。
やり方をもう一度整理すると
- 場面の整理→話の全体の枠組みをとらえる
- 行動や出来事の振り返り→話の大きな流れを把握する
- 出来事に対する感情をイメージする→ツッコミや解説を入れてみる
- 五感からの情報を補足する→過去の体感「~のような感覚」に当てはめる
ようするに、
「行動を順番に振り返っていって、そのときどきに感じたことや気持ち、感情をセットで覚えていく」
といった感じです。
【実用的な 記憶術 は?】
今紹介した中で、一番おすすめしたい記憶術は
2番目に紹介した『ストーリー記憶』です。
つまり、イメージに「動き」+「エフェクト」をつけた「アニメーション」で記憶する記憶術のことです。
なぜならば、前回の記事でご紹介した記憶力を上げる6つのコツ(イメージ、関連化、理由付け、変換、感情、五感)をすべて当てはめることができ、かつ、記憶力だけではなく連想(イメージ変換)による「発想力」も鍛えられるからです。
「記憶の強度」で言えば『場所法』がダントツではあります。
ですが、「やりやすさ」の面では『ストーリー記憶』の方がイメージ同士を結び付けやすく、個人的にも覚えやすかったかなぁという印象があります(場所法の方が得意と言う方も中にはいるかもしれません)。
また「エピソード記憶」は手軽ではありますが抽象的な部分も多く、どちらかと言うと「経験」を記憶することに特化した記憶術です。
また、順番を覚えたり複数の情報を関連付けて一度に覚えられたりする点で『ストーリー記憶』の方が記憶の強度の面でも優位であるためです。
ですが、単体の情報を覚える場合は「エピソード記憶」で使った手法、
「感情」+「五感の補足」の方が覚えやすい人も中にはいると思います。
なので結局のところ、記憶術のエッセンスをそれぞれ応用してやりやすいやり方を使ってみるのが大切です。
記憶術 ・まとめ
- 『場所法』:「アクセスポイント」「ルート」「イメージの抽出」が重要
- 『ストーリー記憶』:コツは頭の中のイメージに「動き」と「エフェクト」をつけて、頭の中でアニメーションで脳内再生すること
- 『エピソード記憶』:行動や出来事に対して感じた「感情」と「五感」とを結びつけて覚えることで、より記憶を強固にできる
→起こった出来事に対してツッコミを入れながら覚えることで記憶に残りやすくなる。
さて、いかがだったでしょうか。
『記憶術』は使えるようになれば、日常生活でも仕事の面でもかなり便利だと思います。
ぜひ参考にしてみてください。
それでは!
コメント
自分も、記憶するのに、内容を整理してから、イメージする事を、心がけています。この記事を改めて読ましてもらうと、自分には、抜けている事が、いくつかあることが分かり、とても勉強になりました。Kuさん、ありがとうございます。
お母ちゃんさん
コメントありがとうございます!
お力になれて幸いです。