【 マーケティング でも使える 】 行動経済学 の 心理効果
どうもKuです。今回は「 行動経済学 で使われている 心理効果 」について解説していきます。
「経済学」と聞くとなにやら専門性の高い難解なイメージがありますが、行動経済学の理論は日常のいたるところで使われており、非常に身近なものでもあります。
今回は、行動経済学とはつまりなんぞや、というところから始まり、行動経済学で使用されている具体的な心理効果についてもご紹介していきます。
「 行動経済学 」とは?
行動経済学(こうどうけいざいがく、英: behavioral economics)とは、経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法である Wikipedia「行動経済学」より引用
行動経済学 と 経済学 との違い
「行動経済学」は、「伝統的な経済学」と同様に経済を理解するための学問ですが、そのアプローチに心理学の手法を用います。「経済心理学」と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。 人によって解釈は異なりますが、経済学は歴史が長く、18-19世期に生まれた学問です。それに対し、行動経済学は1950年頃から始まったとされていて、世間に認知されるようになったのは、1990年代以降です。 「【超わかりやすく解説】行動経済学とは?経済学とはどう違う?【社会人の必須科目?】」より引用
つまりまとめると、従来あった「経済学」に合理性だけでは説明できない行動に出る「人間の心理活動」にも着目した上で経済の動向を分析しようと試みたのが「行動経済学」です。
行動経済学 を利用した購買を促す仕掛け 「 ナッジ理論 」
ナッジ理論とは、「人々が強制的にではなく、よりよい選択を自発的に取れるようにする方法」を生み出すための理論です。2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授によって提唱されました。 ナッジ(nudge)とは、「(注意を引くために)そっと突く、そっと動かす」という意味の英単語です。例えば、学生時代に、課題になかなか手をつけられずに締め切り前になってやっと手をつける….ということはありませんでしたか? やらなければと思いながらギリギリになってしまうのは怠け者だからではなく、「人は常に合理的判断に基づいて行動をする訳ではない」とういう人間の性質のせいなのです。この性質を理解して、うまく人間を動かすにはどうしたらいいのかというヒントがナッジ理論にはあります。 「ナッジ理論とは?基本的なテクニックとマーケティングへの応用例」より引用
「ナッジ理論」とは、「様々な心理効果」や「人の注目や意識が向く仕掛け」を施して、対象者自ら自発的に望ましい選択をさせるためのノウハウ、ともいえます。
もっとわかりやすくいえば、「心理誘導の心理テクニック(心理効果)を実生活の中で活用するための理論」が「ナッジ理論」ということです。
「 行動経済学 」で使われている 心理効果
さて、ここからは、実際に行動経済学で使われている心理効果を実例付きでご紹介していきます。
アンカリング効果
先に与えられた数字などの情報によってその後の判断や行動に影響が与えられる心理現象のこと。
「元の価格と値引き後の価格を同時にのせてお得感を出す」「『期間限定』『無くなり次第終了』などの今すぐ必要な判断を煽る表記」など、ネットショップや料金タグなどで使われていることが多い。
初頭効果と相性がいい。
ウィンザー効果
「当事者よりも第三者から得られた情報に信憑性や信頼感を感じやすくなる」という心理効果のこと。
マーケティングにおいては口コミやレビューなどが該当する。
おとり効果
選択肢の中に、明らかに他の選択肢よりも劣る粗悪な選択肢を混ぜることによって、他の選択肢を選ぶ判断をより強める心理効果のこと。
「これ誰が買うの?」という商品を混ぜることによって、他の商品の有用性をより感じさせる効果が高まる。
カリギュラ効果
「禁止」や「制限」を与えられているものに興味が惹かれやすくなる心理現象のこと。
「会員の方のみご利用いただけます」と表記するより「会員の方以外はご利用できません」または「会員以外お断り」とした方が印象に残りやすくなる。
ディスポジション(気質)効果
「プライドが傷つく行動」や「後悔しそうな行動」を避ける心理傾向のこと。
マーケティングで活用するのであれば「今買わないともう二度と手に入りませんよ」または「もう二度と体験できなくなるかもしれませんよ」「今○○するのはもったいない」などの文言が効果的。
また、株取引において利益が出始めた株をすぐに手放したくなる心理もこの「気質効果」によるもの。
希少性の法則
「入手困難なもの」や「希少価値の高いもの」に対して通常よりもより感知を感じやすくなる心理現象のこと。
たとえば、同じ値段の種類の違う2種類の宝石があったとしたら、より数の少ないものに価値を感じやすくなる。
「年間数本しか製造されない希少なワイン」とか「世界で一つだけの特注品」などとして使われる。
権威への服従原理(ミルグラム効果)
肩書きや権威のある人の発言を信じやすくなる心理現象のこと。
商品価値に説得力をもたせるために紹介者のプロフィールに肩書や実績を書くなどして活用されることが多い。
アメリカ・イェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラム(Stanley Milgram)が1963年にアメリカの社会心理学会誌「Journal of Abnormal and Social Psychology」で実験結果を発表しました。
事前に被験者は45ボルトの電圧を受ける訓練を受けそのショックを知っているにもかかわらず、被験者が先生役となって生徒に回答を間違った罰として電圧ショックを与えるよう白衣の人物から促されると65%もの被験者が最高電圧の450ボルトまで電圧を上げ続けたという内容だったのです。「白衣」という権威が非人道的なことまでも人間に行わせてしまうことがわかり、権威への服従原理の存在が証明されました。
現在志向バイアス
未来の大きな報酬よりも、目の前のすぐに手に入る小さな報酬を優先したくなる心理が働くこと。
つまり、未来の報酬にはあまり魅力を感じにくいという見方もできる。これはダイエットや禁煙が失敗しやすい原因でもある。
たとえば、ダイエットが成功した後の理想を手にした未来よりも目の前のケーキを食べて満足したいというようなことが起こりやすい。
マーケティングでは通販などのネット販売において「即日配達」を重要視することで売り上げを伸ばすことができる。
また、「今ならセットでお得」など「今」を強調する売り方も有効である。
現状維持バイアス(デフォルト効果)
たとえそこに利益があったとしても「変化」や「未知」を避けて「現状維持」を望む心理傾向のこと。
脳は生存に必要なエネルギー温存のために、多量のエネルギーを消費する「変化」を嫌う性質を持っている。
また、未知なものには危険が伴う場合が多いのでこれも生存本能に関わっている。
現状維持バイアスはこだわりのないものほど効果が出やすく、よほどの理由がない限り「いまのままでいいや」という心理状態になりやすい。
「サブスクの初月無料&自動更新」、「メルマガの解約」などで活用されている。
ザイオンス効果(単純接触効果)
繰り返し接することにより好感度や関心が高まっていく心理効果のこと。
ただし、もともとの好感度や関心があるものにしか効果がなく、不快なものに対してはむしろ不快感が増していく傾向にあるので注意が必要。
なのでザイオンス効果を使う前に前提としてできるだけ悪い印象を持たれないようにすることが必要になってくる。
CMやWEB広告などの表示回数は、長い時間を短い期間でやるより短い時間でもできるだけ高い頻度で繰り返した方が効果が高いと言われている。
サンクコスト効果
すでに支払われているコストがあることによって合理的な判断ができなくなること。
つまり「今まで費やしてきた労力や時間がもったいないから途中でやめられない」という心境になることによって、あきらかに続けても無意味な事柄にそのまま従事してしまいやすくなる。
初頭効果
「最初に与えられた情報や印象」ほど記憶に残りやすく、その第一印象を基準にその後の判断や決定をしやすくなる心理効果のこと。
「好印象を持たせるパッケージデザインやWEBデザイン」「最大のメリットが伝わるキャッチコピーや広告タイトル」「新規優遇キャンペーン」などで活用されている。
心理的リアクタンス
自由意思を制限するような発言や制度に対して無意識に反感を抱き、その自由を取り戻すために抵抗しようと反応する心理のこと。
つまり、人には、「自分以外のものに制限されて物事を決めるのではなくて、自分の自由意思で判断し決定したい」という欲求があるということ。
似たような心理効果に「ブーメラン効果」「カリギュラ効果」「ロミオとジュリエット効果」などがある。
相手に「自分が選んでいる」という感覚をもたせることがマーケティングにおいて重要である。
選択麻痺(決定回避の法則)
選択に迷うほど決断を先送りしやすくなる心理傾向のこと。
品ぞろえが増えるほどに購入頻度が落ちる「ジャムの法則」が有名。
ある試食販売において6種類のジャムと24種類のジャムでは6種類のジャムの方が試食の後に購入される確率が高いという実験結果がある。
これは、判断にエネルギーを消費していく中で決断するエネルギーがなくなることによって決めること自体をやめてしまうこと「選択麻痺」という現象が原因で起こる。
この「選択麻痺」を起こさないようにするためには、「判断への労力」を減らす工夫が必要。
たとえば商品の機能や使用目的ごとに購入エリアを分けたり、メニューを区切ったりすることが効果的である。
また飲食などにおいて「期間限定商品」や「おすすめメニュー」のコーナーを設けることによって、「やっぱりやめた」という選択をするの避けさせ、購入者の判断を促すことができる。
ツァイガルニック効果
未完了なことは完了したことよりもいつまでも記憶や印象に残り続けやすくなる心理現象のこと。
ドラマやテレビ番組の途中で入るCMや、一昔前に流行った「続きはWEBで」、マンガやドラマなどの話を引っ張る終わり方などにはこの効果が用いられている。
ツァイガルニック効果のポイントは「続きが気になる」という心理が働くようにすること。わざと中途半端なところで終わらせることによって印象に残すことが大切。
テンション・リダクション効果
「テンション」は「緊張」を意味し「リダクション」は「減少」や「消滅」を意味する。
緊張状態が続いている中でその緊張状態が解けた際に、一気に気が緩むことで精神的な隙が生まやすくなる心理現象のこと。
あれこれ悩んで大きな買い物をした際はついつい余計なものまで購入してしまうことがある。マーケティングにおいては「購入オプション」や「○○購入者限定価格」「セット割り」などが該当する。
元の商品と強い関連性があり、かつ、元の商品よりも価格差が大きいほど効果を発揮しやすい。
バーナム効果
「誰にでも当てはまりそうな曖昧な事柄」を指摘された際に「自分にだけ」言い当てられているような感覚になる心理現象のこと。
代表的なもので、占いや心理テスト、性格診断などでは基本的にこの心理効果が用いられている。マーケティングおいてはWEB広告や通販などのテレビ番組などで「○○で悩むそんなあなたにこそおすすめです」「あなたは~したいと思っていませんか? そうであればこちらをクリック!!」などの表現で用いられていることが多い。
ハロー効果
目立つ特徴に意識が向くことで、それ以外の特徴の評価まで影響されて、その目立つ特徴に思考が偏る心理効果のこと。
マーケティングにおいては商品やサービスのいいイメージや高評価のレヴューなどを前面に押し出すことで、多少の欠陥があったとしてもトータルで高い評価を得られるようにしていることが多い。
このように、ポジティブなイメージを与えるハロー効果を「ポジティブハロー」と呼び、反対に悪い印象を与えるハロー効果を「ネガティブハロー」と呼ぶ。タレントが不祥事を起こすとTV出演が減るのは、スポンサーである企業のCMの商品イメージに無意識にネガティブハローが起こるのを防ぐためが多い。
「海外で売れまくっている」「専門家と共同開発」「○○賞受賞」「売上No!」などのうたい文句はハロー効果を活用しているいい例。
バンドワゴン効果
流行っている物やヒット商品、人気の高い物を欲しくなる、または応援したくなる心理現象のこと。
「流行に乗り遅れたくない」という心理が働くことから起こりやすい。ちなみ、バンドワゴンの反対の意味を持つ「他人が持っていないものを欲しくなる心理効果」を「スノッブ効果」という。
「人気商品」といったPOPや「ランキング形式の商品紹介」などはこの心理効果が用いられている。
ピークエンドの法則
人は物事の感情が最も高まったピークと一番最後の印象や事柄を記憶しやすい心理現象のこと。
ピークエンドの法則(peak-end rule)」とは行動経済学の「ファスト&スロー」の著者で、2002年のノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)が、1999年に発表された論文の中で提唱した仮説です。
人は過去の経験の記憶を時間的な長さではなく、ピーク(最良か最悪)のふり幅とエンド(最終局面)の印象により判断しているというものです。
ピークエンドの法則を実証する実験には、苦痛を伴う検査を患者AとBに行う実験があります。
この実験では時間の長さが問題なのではなく、苦痛の最後に癒しの時間があるかどうかが重要で、癒しの時間の有無がテスト全体へのイメージに大きく影響すると明らかになっているのです。
人の記憶には「経験する自己」と「記憶する自己」と言う幸福の捕らえ方があるとされています。
これは経験に基づく達成感を幸福と感じ印象にのこることを意味し、「記憶する自己」の刹那的記憶の「経験する自己」への優位性を証明するエピソードの一つと言えます。
マーケティングにおいて活用するのであれば、そのサービスや製品の「一番の強み」を前面に押し出すことです。
「この商品といえば○○がすごい!」という印象を残せるかどうかが購買意欲に大きく影響する。
そして、商品紹介においては必ず最後に、その商品を使うメリットや高評価のユーザーのレヴューをのせるなど、「その商品の印象」を高める事柄で締めくくることが大切。
フレーミング効果
「表現方法」や「伝え方」によって物事の印象が変り、その与えられた印象によって判断が左右される心理効果のこと。
どういう風に形容されているかによって、人がその対象から受け取る印象が変わってくる。
たとえば「全品20%割引き」と表示するか「全品100円値引き」と表示するかで、同じ金額であったとしても購入者の購入意欲が違ってくる。
プロスペクト理論
実際の損得より、損失を過大に評価しやすい心理傾向のこと。損失が及ぼす心理的影響は利得の約2.25倍と言われている(個人差はある)。
たとえばギャンブルなどで、225万円手に入るのと、100万円失うのは同等ぐらいの比重に感じる。
れは「損失回避性」といって、人は利益が出ることよりも損失が出ないようにすることを優先させる傾向にあるためである。
マーケティングにおいては、「期間限定セール」や「無料キャンペーン」などがこの心理効果を活用しており「今買わないと確実に損をする」という印象を与えることによってリピートユーザーの購入意欲を高めることに成功している。
また、キャッチコピーにおいて「他社製品と比べて確実に○○できる!」とするより「他社製品では××%の確率で~してしまうが、自社製品だと○○%まで抑えられる!」とした方が印象に残りやすい。
返報性の原理
誰かから何かを与えられたときに、「相手に何かお返ししなければ!」という心理が働く心理現象のこと。
これは「何かをしてもらったお礼」というポジティブなお返しもあれば、「やられたからやり返したい」というネガティブなお返しも返報性の原理に当てはまる。
マーケティングにおいてはサービス利用前や購入前の見込み客に対する「クーポンの配布」や「無料サンプルの提供」などで活用されている。
>>【 世界の心理学 ①】心の仕組みがわかる「 ○○ 理論 」一覧
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