脳の構造を理解する・認知機能を高める9種の方法【脳力開発】
今回は、「 脳の構造 」と「 認知機能 」についてわかりやすく解説していきます。
《今回の記事の目的》
- 脳の構造を知ることでどこを鍛えればいいかがわかる
- 脳機能や認知機能を向上させるための方法を知る
脳 の 構造
- 重さはだいたい1200~1600g*と個人差がある。
- 大きく分けて、大脳、小脳、脳幹の3つの部位に分かれる。
- 五感からの知覚をもとに外界からの情報を処理する。
- 主に思考や記憶、運動機能や感情のコントロール、自律神経の調整などをする働きを担う。
- 硬い頭蓋骨と三層構造を持つ髄膜(ずいまく)(硬膜、くも膜、軟膜)により外部の刺激から守られている。
- くも膜と軟膜の間には「くも膜下腔」と呼ばれる部位があり、髄液で満たされている。
- 髄液には衝撃を吸収したり、脳細胞への栄養を補給したりする役割がある。
*頭の良し悪しは、重さだけによらず神経回路の密度(脳内ネットワーク)も重要になってくる。実際にIQ175で脳の重さが1230gしかなかった人物も存在している。
*一般的に「グリア細胞(後述します)」が多いほど、脳は重くなると言われている。
大脳の働き
思考や運動、知覚、感情のコントロールなどの「知性」を表す働きをする部位
- 大脳はその名の通り脳全体の約80%を占める最も大きな部分。
- 大脳は主に「新皮質」「旧・古皮質」の階層に分かれ、区分として「前頭葉」「側頭葉」「頭頂葉」「後頭葉」の4つの部位に分かれる。
《大脳新皮質の役割》
大脳新皮質は約150億個もの神経細胞(ニューロン)とそれらをつなげている神経回路(シナプス)から成り立ち、外部からの様々な情報を処理していると言われています。
- 運動機能(筋肉に指令を出し身体を動かす)
- 感覚機能(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などの知覚機能)
- 認知機能(理解、判断、表現、記憶などの知的機能)
- 情動機能(感情の理解、表現、抑制などの機能)
《旧・古皮質の役割》
- 本能的な欲求(食欲・性欲・睡眠欲など)
- 原始的な感情(怒りや恐怖、不安など)
- 記憶の形成
《大脳辺縁系》
大脳に覆われるようにして脳の内側にある、内分泌系(ホルモンの分泌)と自律神経系(交感神経と副交感神経)に影響を与える機能を持つ部位
情動、意欲、記憶、生命維持、本能行動、自律神経などに関与している複数の脳の器官をまとめて「大脳辺縁系」と呼びます。
「大脳辺縁系の主な部位」
海馬体:短期記憶を担い、情動や性衝動などにも関与している
偏桃体:本能や快・不快の感情に伴う反応を司っている
側坐核:「脳内報酬系」とも呼ばれ、快楽の感覚に関わる
視床下部:ホルモンの産生、自律神経機能の調整、空腹やのどの渇き、性衝動や睡眠サイクルなどにも関与している。
帯状回:大脳辺縁系の各部位の中継点になり、自律神経の調整、認知や注意のプロセスや感情記憶にも関与している。
乳頭体:記憶回路の中継点の役割をする。
など。
大脳と脳葉
《脳葉一覧》
- 前頭葉:思考、自制、判断、嗅覚、運動指令、計画遂行力、感情・言語表現の領域
- 側頭葉:記憶、聴覚、言語理解の領域
- 頭頂葉:時間・空間認知、体性感覚、味覚、読み・書き・計算能力の領域
- 後頭葉:色彩判別、視覚情報の処理、イメージ記憶の領域
《前頭連合野(前頭葉)の役割》
思考、学習、感情、意志、推論、理性、意欲、表現に関わる脳の部位
- 前頭葉が成長に伴って発達することで、理性的に思慮深く、いわゆる「大人」な態度をとれるようになってくる
- 事故などにより前頭葉が失われると、幼稚になったり、ぼーっとして一日中なにもしないようになったりする
- 運動野を司る(体を動かす指令を出す)
- 言語野を司る(会話に関わる言語力)
《側頭連合野(側頭葉)の役割》
記憶や本能、情動に関わる部位
- 聴覚中枢(言語や音の解析)
- 言語理解
- 記憶の蓄積(長期記憶)
- 記憶の振り分けなどを担う「海馬」がある
※ちなみに、飲酒により記憶をなくす現象は、アルコールにより海馬の機能が低下することで起こる。
《頭頂連合野(頭頂葉)の役割》
外界の認識に関わる、感覚器官からの情報が集まる部位
- 空間認知、後頭葉からの視覚情報の統合
- 顔、手、指先、足などの感覚
- 痛覚や触覚
《後頭連合野(後頭葉)の役割》
物を視覚により認識する部位
《運動連合野の役割》
身体を動かす指令を出す脳の部位
小脳の働き
主に運動学習や運動機能をコントロールしている脳の部分。
俗にいう「運動神経がいい」とは、小脳の機能が優れていることを意味します。
手先を使ったりなど筋肉の細かい動きをコントロールしたり、姿勢の維持、身体のバランスを調整したりする役割もあります。
- スポーツのテクニックを身につける
- 運転や自転車の乗り方を覚える
- 箸を持つ
- スムーズに歩く
など。
脳幹の働き
参照:東北大学+日立ハイテクによる脳科学カンパニーNeU
呼吸をしたり、内臓を動かしたり、消化器官を働かせたりなど、主に生命維持のための機能を調整する脳の部位。
「中脳、橋、延髄」
- 中脳:感覚や運動のコントロール
- 橋(きょう):運動に関する情報を大脳から小脳に伝える
- 延髄:呼吸、心拍、消化などを調整する
「間脳(視床、視床下部、脳下垂体)」
- 空腹やのどの渇きを知らせる機能
- 体温やホルモンの調整などを行う
- 内臓や血管の働きを調整する
右脳と左脳
《右脳の働き》
右脳は主に「創造性」を働かせる役割を担っています。
- 言語表現
- 想像力
- 図形や音楽の認識
- 空間把握
- 感覚的な認知
など。
《左脳の働き》
左脳は主に「論理的な思考」を働かせる役割を担っています。
など。
《脳梁》
右脳と左脳をつなぐ神経線維のこと。
男性よりも女性の方が約20%程も発達していると言われています。
脳梁が発達していることで、言語で表現するための右脳と言語を理解するための左脳との連携が取れやすくなり、言語機能において優れた機能を発揮することができます。
ゆえに、男性よりも女性の方が言語機能が発達していると言われているのはそのためです。
ニューロンとシナプス
ニューロンとは「神経細胞」のこと。
そして、そのニューロン同士をつなぐ「神経回路」をシナプスと呼ぶ。
- シナプスの密度が高いほど脳内のネットワークがスムーズに行われる。
- 記憶力や学習能力の差はシナプスの密度による。
- 脳の機能を高めるためには、単純に脳細胞やニューロン(神経細胞)を増やすだけでなく、シナプス(神経回路)も増やす必要がある。
- セロトニンやドーパミンなどの様々な神経伝達物質はシナプスにある受容体に結合することでニューロン(神経細胞)に伝わっていき、そのニューロンから新たに別のニューロンにシナプス(神経回路)を通して伝わっていく。
ニューロン(神経細胞)とシナプス(神経回路)は脳を使えば使うほど増えていきます。
しかし、脳を使わないとニューロンとシナプスはどんどん減っていき、それが認知症や脳力の低下につながりかねません。
《ニューロンとシナプスを増やす習慣》
- 新しいことへの挑戦
- 運動の習慣
- 人との会話
- 良質な睡眠
- 腸内環境を整える
など。
グリア細胞
〈グリア細胞の役割〉
- ニューロンを支え接着し固定する
- 脳の神経細胞に酸素と栄養素を供給する
- 神経細胞を他の神経細胞から守る
- 神経伝達のエネルギー効率を高め脳に入力される情報の速度を調整する
- 有害な細菌を破壊する
- 壊れた脳細胞を食べて処理する
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認知機能 とは?
一次機能と高次脳機能
「一次機能」とは、知覚機能や運動機能のこと。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感なども一次機能に含まれます。
いわば動物であればどれでも持っている機能と言えるでしょう。
対する「高次脳機能」は、一次機能から得た情報をもとにより高度な命令に変換する機能のことです。
「認知」「言語理解・言語表現」「記憶」「計画」「情動」などが高次脳機能に含まれます。
認知機能
認知とは理解・判断・論理などの知的機能を指し、精神医学的には知能に類似した意味であり、心理学では知覚を中心とした概念です。 心理学的には知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素が含まれますが、これらを包括して認知と呼ばれるようになりました。
「認知機能(にんちきのう)|e-ヘルスネット」より引用
《認知機能の種類》
-
記憶力:物事を覚えておくために必要な能力。 (作業記憶力):会話しながら会話の内容を覚えたり、何かの動作をしながらその動作自体を覚えたりするために必要な能力。
-
遂行力:物事の計画や手順を組み立てて物事を成し遂げるために必要な能力。「段取り力」ともいえる。
-
思考力:物事を論理的に考えるために必要な能力。
-
判断力:物事を決定するために必要な能力。情報を分析し精査する力も判断力には求められる。
-
注意力:一つの事柄に意識を集中させたり、複数の物に同時に注意を向けたりするのに必要な能力。
-
空間認知力:視覚からの情報を分析して高さや奥行きなどの空間の状態を把握するための能力
-
計算力:数字の仕組みを理解し計算する能力。時間やお金の配分を考え出すのにも必要な能力でもある。
-
言語能力:話している内容や文章などの言葉の意味を理解するために必要な能力。言葉を用いて相手に自分の意志を伝えるためにも必要な能力でもある。
社会的認知機能
認知機能別 トレーニング方法【全9カテゴリー】
1.「記憶力・作業記憶力」
インプットとアウトプットを繰り返す作業、「ワーキングメモリー」を鍛える作業、など。
- 日記
- 読書
- クロスワード
- ウォーキング
- 歌詞の暗唱
- ダンス
- 楽器
2.「遂行力」
手順や段取りを決めて計画を実行していく活動、など。
3.「思考力」
論理力が必要とされる作業、など。
4.「判断力」
情報を精査し物事を決定する必要がある事柄、など。
5.「注意力」
周囲の状況の把握や観察力が必要とされる作業、もしくは集中力の要する作業、など。
6.「空間認知力」
奥行きなどの空間を意識しながら視覚を使う事柄、など。
- イラストレート
- 模写
- 塗り絵
- 散歩
- DIY
- インテリアコーディネート
7.「計算力」
何かの基準をもとにシュミレーションする作業、など。
- 数式を解く
- 暗算
- 買い物
- スケジュールの時間割を考える
8.「言語能力」
言葉の理解が求められる作業、など。
9.「共通するもの」
脳の健康状態を整えることや血流促進、刺激を受けられる作業、など。
- 運動(脳の血流アップ、ニューロンの増加)
- 新しい経験(ドーパミンの分泌)
- 手先を使う作業(脳の活性化、記憶力や判断力、運動機能などの向上)
- 良質な睡眠(脳機能の維持)
- 良質な食事(脳機能の維持・活性)
脳 の 活性化 & 健康を保つ 食品
- 魚(DHA、EPA):集中力や記憶力の向上
- イクラ(アスタキサンチン):脳細胞の酸化を防ぐ
- ナッツ類(DHA、コリン):記憶力の向上、認知症の緩和
- クルミ(α-リノレン酸→DHAに変換する):認知機能の向上
- アーモンドバター(ビタミンE、ミネラル):脳細胞の酸化を防ぐ、脳の血圧を調整する
- ベリー類(アスタキサンチン、フラボノイド):脳細胞の酸化を防ぐ、認知機能の低下の改善
- 緑黄色野菜(ビタミンA・C・E):
- アマニ油(ビタミンE、オメガ3脂肪酸):脳の血行促進
- カカオ(テオブロミン):細胞の老化を防ぐ、脳の血行促進
- 大豆製品(大豆レシチン):脳の血行促進、脳細胞の活性化、ドーパミンの分泌を高める(意欲の向上、気分の改善)
- 卵黄(卵黄レシチン):
- アボガド(ビタミンE):脳細胞の酸化を防ぐ
- かぼちゃ(βカロテン):脳細胞の酸化を防ぐ
- ブロッコリー(葉酸):記憶力の向上
- アブラナ科の野菜(ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ)(グルコシノレート):血管を健康な状態に保つ、認知機能の低下を防ぐ
- ブラックビーンズ(葉酸、ビタミンB6):神経細胞の保護
- カレー(ターメリック):認知機能の低下を防ぐ
- 大麦(ビタミンB6、B12、葉酸):記憶力の向上、認知機能の低下を防ぐ
- 緑茶(カテキン):記憶力、注意力の向上
- コーヒー(カフェイン):中枢神経への刺激による集中力の向上
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